産業用イーサネットスイッチの構造とは?産業用と商用スイッチの違いを解説

イーサネットとは、産業向けに使用されているもののことで、工業用イーサネットともいわれます。オフィスなどで使われる標準的なイーサネットよりも高い堅牢性、リアルタイム性能(通信に遅れが生じないこと)を備えています。今回は、産業用イーサネットスイッチと構造、産業用と商用でのスイッチの違いについて紹介します。ぜひ最後まで読んでお役立てください。

産業用イーサネットスイッチの構造

イーサネットスイッチ

産業用イーサネットは、産業用環境で使用する決定性とリアルタイム性を兼ね備えた通信プロトコル(コンピュータ同士が通信を行うための規格)です。管理スイッチは、シリアルポート管理またはパラレルポート、ほかにもWebブラウザ管理やネットワーク管理の3つの方法で管理できます。

シリアルポート管理

シリアルポートとはシリアル伝送方式で通信するためのケーブル差し込み口(ポート)のことで、シリアル通信は1本の信号線で1ビットずつデータを転送する方法です。その速度は、ビットレートと呼ばれ、すべての機器を同じように合わせます。少ない信号線で接続が可能であるため、線材や中継装置のコストが抑えられるというメリットがあります。

ウェブ管理

管理スイッチはWeb経由で管理できますが、スイッチにはIPアドレスが必要です。このIPアドレスは、管理スイッチ以外に使用することはありません。Webブラウザを使用してスイッチを管理する場合、スイッチはWebサーバー同等ですWebページがハードディスクに保存されることはありません。管理者がIPアドレスを入力するとスイッチはWebページをサーバーのようにコンピュータに渡します。スイッチの帯域幅を占有するためこの方法は「帯域内」と呼ばれます。Web管理は、LAN上で行うことができるので、リモート管理が可能です。

ネットワーク管理

ネットワーク管理スイッチは、国際標準に準拠したネットワーク危機管理仕様のSNMPプロトコルになっていて、デバイスはすべてネットワーク管理ソフトウェアで管理ができます。LAN経由でネットワーク上のスイッチ、ルータ、サーバーなどを管理できるネットワーク管理ワークステーションにSNMPネットワーク管理ソフトウェアのセットをインストールするだけで簡単に使用することが可能です。

産業用イーサネットスイッチの種類

イーサネットスイッチ

産業用イーサスイッチは2種類に分けられます。「アンマネージドスイッチ」と「マネージドスイッチ」です。

アンマネージド スイッチ

多くのレガシーシステム(メインフレーム(汎用機)やオフィスコンピュータなど、肥大化・複雑化・ブラックボックス化等の問題を抱え、柔軟性や機動性がなく、最新技術を適用しにくいシステムのこと)で使われるスイッチです。今までのスイッチングハブと同じ機能をもっています。安直にケーブルを接続しプラグ&プレイで手軽に動作し、接続機器のMACアドレスを自動で管理でき、パケットを伝送先の機器へ届けられます。高度な管理を必要とせずに、コストを抑えて機器を接続したいというニーズを叶えられます。ハブよりも大幅に改善され伝送パフォーマンスがあがりますが、不正アクセスの検出や冗長構成(システム障害のときなどに、予備の装置をバックアップできる構成)は組み込まれません。

マネージド スイッチ

マネージドスイッチは、アンマネージドスイッチよりも価格は高いですが、多くのリスク認識機能をもち、ネットワークを管理できるスイッチです。管理されたスイッチは、ネットワークを素早く復元し、障害が発生したときの信頼性を向上させる機能があります。セキュリティ面や管理面で非常に優れているといえるでしょう。高性能で信頼性が高いネットワークと高度な制御が必要な産業分野では、マネージドスイッチが必要不可欠といえます。

産業用と商用スイッチの違い

産業用スイッチと商用スイッチ、どちらも通信がイーサネットであることには本質的にかわりありませんが、産業用製品は機能面、性能面において商用製品より優れています。商用スイッチは、主にオフィス環境で使用されることを想定して作られたものに対し、産業用スイッチは粉塵、振動、極端な高温、低温、EMI(電磁妨害)など、過酷な環境に対応し、耐久性に優れた設計となっています。

産業用イーサネットスイッチの選び方は?

産業用イーサネットスイッチの製品は、種類と構造を理解したうえで、選びましょう。選ぶポイントは次の通りです。

● 必要な数のポートが設置されていますか?

● 必要なパフォーマンス(高速性)は確保されていますか?

● 信頼性(冗長機能)が確保されているか?

● セキュリティ面で安全性は確保されていますか?

● 耐環境性は充分ですか(堅牢、防塵・防爆、IP準拠など)?

ポートの数は、接続できるデバイスの数で決まります。最近はスイッチの高集約化が進んでいて、速度との兼ね合いになりますが、ほとんどの製品が2?64個のポートをひとつのスイッチで対応できます。一部の製品は、スイッチを互いに接続して使用可能なポート数を増やすスタック機能も備わっています。高速性については用途によりますが、イントラネットでは100Mbps(ファストイーサネット)、ビデオファイルなど大きなファイルの転送には、1000Mbps、最新のネットワーク展開には10Gbps(Gbps:ギガビットイーサネット)です。約100Gbpsの光ファイバーは、容量の大きいデータ伝送と異なるデバイス間の長距離通信に使用できます。

安全性はあるか

冗長化によって安全性が保たれます。冗長化とは、システムに何かしらの問題が起きた時に、障害発生した後でもシステム全体の機能を維持し続けられるように、常に予備装置をバックアップして運用しておくことです。障害が起きた時、瞬時に切り替えができる仕組みを持ちます。人命に関わることや財産情報など、システムが障害されたら大きな打撃を受ける場合には、この機能は必要不可欠といえるでしょう。

信頼できる商品なのか

信頼性とは、工場現場内の粉塵や電気の品質など、雰囲気や使用条件の悪いところでも、正常に動作し続けられるかということです。システムに何かしらの問題が生じたときに、障害発生したあとでもシステム全体の機能をキープできるような冗長化による機能も信頼性の中に含まれます。

耐性環境は大丈夫なのか

工場内の作業エリアでは、通常の情報技術機器の範囲を超える、極端な厳しい環境で動作する必要があります。炭坑や船舶など過酷な作業環境に加えてEMI(電磁適合性)や振動、衝撃、腐食、温度、湿度、粉塵に耐えるキャリアグレードの性能を持っています。

まとめ

イーサネットスイッチ

今回は、産業用と商用イーサネットスイッチの違いについて説明しました。これから先、スマートファクトリーやIoT、エッジデバイス対応など、製造業のDXは急速に進展していくでしょう。商用イーサネットの技術に加えて、産業用イーサネットはリアルタイム性、信頼性があるかが重要となっています。マネージメントスイッチを導入することで、ネットワークの管理、信頼性、セキュリティ-対策を整えられます。この記事を読んで、産業用と商用イーサネットスイッチの違いについて理解して、適切に利用していただけたら幸いです。